(1995年度:研究紀要)


中学校区の同和教育のネットワークづくりをめざし

新しい世紀・地域・夢
───みつめ・創る子どもたちを───


1、はじめに

 昨年度より「国連人権教育の10年」が出発し、21世紀は「人権と共生の時代」と言われ、人権がキーワードになる時代を迎えようとしています。また、学校を大きく変える教育改革が進められています。
 三中校区の同和教育もこのような流れの中で、これまでの連携を更に積み上げながら、「小・小、小・中連携を基盤に、地域とともに歩む学力向上と積極的な人権意識の向上をめざして」をテーマに、「中学校区の同和教育のネットワークづくり」を通して、2年間取り組みをすすめてきました。

                 【研究の具体的課題】

@「多様な学びのシステム化」を通して、「自ら学ぶ力」を育成するための授業改革
  ・三校合同授業研、部内授業研等による授業交流
  ・授業改革に向けた研究
A自ら選択し、参加・体験することを大切にし、感動し合える人権学習
  ・部落問題学習のカリキュラム化と授業交流
  ・選択・体験・参加型の人権学習の指導方法の研究・交流
B中学校区の児童・生徒のふれあい活動、地域との交流の推進
  ・児童会・生徒会交流、クラブ・授業体験交流、三中訪問等の児童・生徒間交流
  ・遊び・スポーツ交流、児童会交流、体験活動交流等の児童間間交流

 これらの研究課題を、「つながる子どもたち、中学校区のネットワーク」「授業改革のネットワーク」「新しい人権学習のネットワーク」「地域ネットワーク」の四つのネットワークづくりをキーワードにして、取り組みを進めてきました。

2、同和教育のネットワークづくりをめざして
───4つのネットワークづくりをキーワードに───

(1)つながる子どもたち、中学校区のネットワーククづくり

@小・中学校のネットワーク

 六年生の子どもたちは、学力のこと、仲間のこと、クラブ活動など中学校に向けて様々な期待や不安を持っています。とりわけ、中学進学が間近になるにつれて、今までの仲間と離れる不安などから、自分自身の中で中学校に向けて目標が持てなかったり、不安定な気持ちになる事が多くなります。
だからこそ、子どもたち自身の体験(聞く、見る、参加する)を通して、また中学生とのふれあいを通して、中学校の生活を直接知ることを大切にしたいと考えました。そこから誕生したのが、中学生とともにふれあい・体験する13コースのジョイントレッスン(小中授業体験交流)と、クラブ体験入部、三中体育祭への特別参加(小中合同種目)です。また、子どもたちの中学校に向けての不安や質問を直接中学生から聞き取る「三中訪問」を実施し、自らの進路を見つめる取り組みを大切にしています。
 なかでも、中学校の先生に「とっておきの授業」を用意してもらって、自分の希望で選択をするジョイントレッスンは、子どもたちにとても好評で、昨年度は10月26日の発表会に、中央小と布忍小の合同でジョイントレッスンを実施しました。次の表は、昨年度のジョイントレッスンの要項です。

                      【小学生の感想文より】
・ 私は、国語が苦手やから、どうしようと思っていました。でも、実際、三中に行っ
 てみて、ジョイントレッスンに参加してからなぜか、国語がおもしろくなりました。
 そして、三中の授業が、「むずかしいんとちがうかな。」と思っていたけど、三年生
 の先輩も、やさしくて、授業も分かりやすかったから国語の授業に行って、おもしろ
 かったです。
・ ジョイントレッスンでは、みかんのジャム作りをした。それぞれのグループに三中
 の先輩がついてくれ、みかんを切る時、うまいとほめてくれたので、嬉しかったです
 なべで煮ている時でも、「なかなかうまいな。家でもやってるの。」などと聞かれて
 ちょっと上機嫌だった。

                     【中学生の感想文より】
・ 今日は、研究集会でたくさんの人が来ていてびっくりした。午後からのジョイント
 レッスンの時、たくさんの人が来るって知らんかったから、なお一層びっくりした。
 そういう中で、ジョイントレッスンでフィリッピンのことについて、小学生といっし
 ょにやった。はじめ、フィリッピンの歴史やロテリーさんの話を聞きながら緊張して
 いた。小学生の子たちも、バンブーダンスを始めると嬉しそうにやっていた。初めて
 だから、足を挟んだり、こけている人もいたけど、最後の方になるとみんなできてい
 た。「よかった。」と思った。こういうことして、小学生にフィリッピンのことや三
 中の取り組みをわかってもらって、自分も楽しかったからよかった。
  研究会に来てくれた先生の一人が、「こういう取り組み、いいなぁ。」って言って
 くれたからそれがとても嬉しい。ジョイントレッスンの後、なんと、来ていた先生た
 ちが、バンブーダンスを「楽しい。」と言いながらやっていた。すごくうけたみたい
 で、(やってよかったなぁ。)と思った。

 ジョイントレッスンの反響は大きく、「中学校になったら、あの先生の、あんな楽しい授業を受けてみたいなぁ。」「嫌いだった教科が、好きになれそう。」「次の、三中との取り組みが楽しみ。」などと、中学校に入ってからの授業を楽しみにする子や中学校に対して親しみを覚える子がたくさんでてきています。

A小学校間のネットワーク

 布忍小の児童と中央小の児童は、お互い大半は「どんな子がいてるのか。」知らない現状である。従って、中学進学を控える6年生にとっては、「中学校で仲間ができるかなぁ。」「○○小学校の子とうまくやっていけるかなぁ。」と不安も大きくなってくる。いずれは、中学校で出会う子ども達である。それまでの間に、様々な形で交流を持ち、お互いが少しでも知り合うことで、子ども達が持つ不安を少なくしていきたいと考えています。
 また、そのような出会いや交流の場を持っていくことが、両校の子ども達にとって、自主的な活動の場を広げていくことでもあり、お互いの取り組みを刺激しあい、視野を広げることにもなると考えています。
具体的な取り組みは、
・学年間でお互いの良さやがんばりを交流する、合同チームによる遊び・スポーツ交流、
 ・取り組みを語り合うグループ別交流、校区の合同クリーン作戦など
・児童間で中学進学への思いを語り合う交流会
                          【感想文より】
わたしは、土曜日、中央小に行った。「中学校で、どんな不安ありますか。」って聞い
たら、「友だちできるかとか、勉強わかるか心配です。」って答えてくれた。そんなこと
思っているのは、今まで、自分だけかなぁって思っていた。でも、中央小へ行って、そん
な不安も少し消えたように思った。 (略)
遊びの交流会は、ルールは少し違うところもあったけれど、中央小の子と仲良くなれて
よかったなと思う。中学校へ行っても、いっしょにがんばれそうな気がした交流会だった

 このように、ともに遊ぶ・スポーツをする交流を通して、子ども達はお互いのことを知るきっかけをたくさんつかんでいます。同時に、交流会を通して、他校の取り組みや子ども達と直接出会うことで、お互いの取り組みを刺激し合うことはもちろん、改めて自分たちのクラスや学年の取り組みを振り返る場にもなっています。また、自分たちで準備をする・運営するなどの子ども達の自主的な取り組みを大切にすることで、この交流会が学年の自主活動の一つに位置付き、積極的に取り組む子ども達の姿が見られます。
 一方で、このような子ども達の交流の取り組みを通して、両校の教師同士の交流を活発にすることになり、教師同士のネットワークづくりが大きく前進しました。事前の打ち合わせのための合同学年会を持つ事から出発し、それぞれの学年の取り組みの交流をし合うことで、お互いの認識が深まり、様々な取り組みを進める上での大きな基盤になっています。

(2)授業改革のネットワークづくり

@多様な学びから自学自習の力を

 三校それぞれの授業づくり、授業改革の取り組みを大切にしながら、「多様な学びから自学自習の力を」をキーワードに授業改革に取り組んできました。
 地域と結びついた生活・体験学習の実践を基盤にしながら、子どもの選択・体験を大切に多様な学習形態の導入をめざしている中央小。一斉授業を改革し、自己選択・個別学習をキーワードに、一人ひとりの学習意欲を高め、自学自習力の育成をめざす授業改革に取り組む布忍小。ティームティーチングや少人数学習など、個に応じた指導方法を導入した授業に取り組む第三中学校。それぞれの特徴を活かしながら、授業交流を通してお互いが学び合い、授業改革のネットワークづくりを進めてきました。

A思いを一つに、三校合同授業研の取り組み

 様々な授業交流の中で、とりわけ、三校の全教職員が集まっての三校合同授業研は、グループ毎の活発な意見交流が行われ、お互い学び合う大切な場になっています。各校の授業改革の取り組みや問題意識などが出し合われ、それぞれの取り組みを振り返り、お互いの共通認識をはかる場でもあります。その時には、大学の研究者を招聘し、その助言の中から、授業改革の到達点を明らかにしながら、新たな課題を絶えず明らかにして取り組みを進めてきました。
 また、教科部内の授業研や学年授業研もお互いに紹介し、それぞれのレベルで参加し合い、子どもの実態や問題意識を出し合う中で、よりきめ細かな交流が実施されています。一方、一人ひとりの授業力量を高めるために、先輩教師の授業を直接間近に参観する三校合同授業研修会や講師を招いての研修会も行ってきました。

B研究発表会の公開授業

 1学期より部内授業研や学年授業研を積み上げながら、三校の公開授業では、それぞれの特徴を生かした授業が行われました。第三中では、T.Tにる授業、親・地域と結んだ進路学活の公開授業。中央小では、子どもの参加・体験を大切にした地域と結んだ授業。布忍小では、T.T・少人数による新しい授業形態、「習得学習ノート」を活用やコース別学習の公開授業が実施されました。1600名を超える参加者の方々の貴重な意見を頂くことができました。

(3)新しい人権学習のネットワークづくり

 第三中学校区の人権・部落問題学習の長年の共通課題の一つは、豊かな人権認識を育てることです。
 6年生になると中学校に対する不安が大きくなってきます。とりわけ、「村」の子にとっては、「中央小の子に部落差別のこと分かってもらえるか。」が大きな不安です。そんな不安を取り除き、自信を持って仲間とともに胸を張って三中進学をめざす多様な取り組みが、布小で続けられてきました。一方、中央小においても、地域と結んだ生活・体験学習の積み上げや部落問題学習の中で、豊かな人権意識の育成に力を注いできました。
 しかし、様々な不安を抱きながら、初めて中学校で出会う子ども達を思いを考えた時、少なくともそれぞれの小学校での部落問題学習(歴史学習)について、カリキュラム全体を討議し、共通認識をはかり、統一した指導案を作成することが求められていました。そこで、94年度より、今までの取り組みを交流するとともに、共通したカリキュラムの作成に向け、討議を始めました。その中で、小学校での部落史学習の基本的なねらいを確認するとともに、共通のカリキュラムと基本的な統一指導案の作成を行うことができました。また、小学校での積み上げとして、中学校での部落問題学習についても論議を深めることができました。
 更に、その指導案を基に、各校での部落問題学習の授業交流(第三中:生徒自作の紙芝居による「解放令」、中央小:戦後の解放の歩み「阪南中央病院ができるまで」、布忍小:「全国水平社の成立」)を行い、子どもの姿をつぶさに見ながら相互に研修を深め、統一指導案をより豊かにする事ができました。
 95年10月26日の研究発表会では、中央小では「水平社宣言から人々の立ち上がりを考える」授業、布忍小では地域教材を使った「解放令」の授業、第三中では「生徒の自主活動を通した部落史学習」の授業を、それぞれ公開し多くの参加者の先生方に見ていただきました。
 また、一人ひとりの選択と参加・体験を大切に、多様な学びのスタイルを導入した新しい人権学習の取り組みをすすめています。
                     【松原第三中】
               輝く、子ども・地域・学校を
・地域めぐり・松原探検など、人との出会いふれあいを大切にした地域学習・部落問題
 学習
・地球市民の育成をめざした、多文化共生の国際理解学習
・多様な職業体験、未来を見つめる進路学習=「三中ハローワーク」
・共に生きる社会をめざしたボランティア活動などの総合体験学習
                      【中央小】
               人権・生活・体験学習
・地域・働く人々からの聞き取りなど人に出会い、人間に学ぶことを大切にした人権学
 習
・作物栽培・物づくりなど、子どもの主体的な動きを大切にした生産・体験学習
・仲間とともに活動し、体験する自主活動
                  【布忍小】
      地域と結んだ、選択・参加・体験の人権学習
・父母の思いを見つめる「父母の労働に学ぶ」取り組み
・父母と自分の生い立ちを見つめる「生活・自分史学習、部落問題学習」
・被爆された方々の生き方に学ぶ「ヒロシマ修学旅行」
・多様な職種で働く人々の思いにふれる「進路学習」
・福祉施設の訪問をはじめとする多様なボランティア活動

(4)子どもの育ちは地域のネットワークから

 学校週五日制を契機に、学校が大きく変わろうとしています。「地域に開かれた、地域とともに歩む学校」への役割がより一層求められています。
 三中校区では、「子どもの育ちは、地域のネットワークから」をキーワードに、地域とつながった多様な取り組みを大切にしてきました。とりわけ、土曜日を、子どもたちの参加・体験・感動の学習にする工夫をし、親子集会・親子運動会・映画会など親子での取り組み、地域のおじいちゃんおばあちゃんを招待する交流会やもちつき大会など地域とつながった取り組み、またクリーン作戦などのボランティア活動などを実施しています。
 一方、市立青少年会館では、第二・第四土曜日に布小校区対象に、多様な経験と様々な人との交流を通して、子どもたちに自ら学んでいく力を育てていくために、子どもの選択・体験型の文化・スポーツ教室「土曜子どもクラブ」が実施されています。子どもたちに興味・関心の高いパソコンやサッカーなどを講師の先生とともに楽しい活動を行っています。また、一緒に子どもと取り組もうと青少年会館に足を運んでくれる親が増えてきています。

 学校が積極的な援助をしながら、地域・親の子育ての力を高めていくことが大きな課題になっています。子どもと様々な関わりを求めている親に具体的に方針を指し示しながら、子育てをともに考えていくネットワークづくりが求められています。一人ひとりの親がそれぞれバラバラになってしまうのではなく、ともに悩みや思いを出し合いながら高め合うネットワークづくりをめざしています。その中で、三学期より、布小校区の保護者対象に青少年会館の「子育てセミナー」が開催されました。親と子どもの会話や関わりの仕方を、ロールプレイを通して学習していきました。

3、更なる広がりと深まりを 
─── 成果と課題にかえて───

12月の拡大総括会議では、次のような成果が話し合われました。
@児童間、児童・生徒間の活発な交流を通して、中学進学に対する深い関心と自信が育
 成されたその結果として、中学進学率が大きく前進しました。
A小学校間で、部落問題学習(歴史学習)の統一指導案が作成され、授業交流を通して
 実践を深め、共通して子どもたちの人権意識を高めることができた。
B合同授業研、部内授業研の交流を通して、自学自習力と結んだ学力向上をめざした授
 業改革が推進され、少人数・チームティーチング等の指導形態の改革、選択学習・自
 己評価学習・「習得学習ノート」の活用等の指導方法の改革が推進された。
C合同授業研修会や講演会、他校視察等を通して授業改革に対する教師間の意識改革が
 進んだ。
D府下を始め西日本各地から1600名の参加を得て協同研究発表会が成功し、校区の
 保護者に対しても大きな啓発の場にもなり中学校区の同和教育のネットワークづくり
 に弾みがついた。
E地域と結んだ人権・部落問題学習の実践のなかで、地域の方々とのネットワークづく
 りや研究者の方々等多様な人材とのネットワークづくりが進んだ。
F様々な取り組みや交流を通して、教師間のネットワークづくりが大きく前進した。
このような成果と同時に、今後の課題も明らかになってきました。
@授業改革(指導形態・方法)の一層の具体化と三校教員の共通認識の広がり
A部落問題学習(歴史学習)の統一指導案づくりを基盤に、各学年の人権学習のカリキ
 ュラムの系統化と交流
B小学校間の児童間交流の一層の活発化
C教師間のネットワークの深まりと広がり
D地域の方々、教育研究者等多様な人材との ネットワークづくり
 拡大総括会議の中で、これまでと同様の取り組みを次年度以降も引き続き続けることと、更に明らかになった五つの課題を取り組んでいくことが確認され、「中学校区の同和教育のネットワークづくり」を更に深め広げて行きたいと考えています。
                               (松原三中校区同和教育協同研究推進校連絡会:1996/3)

Back