14:30〜17:15  全体会
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指導講評 
    武庫川女子大学大学院教授 
                西井克泰氏

 
(要旨)
 研究開発最終年度をむかえ、幼・小・中の一貫したプログラムができあがってきた。いじめ・不登校の未然防止という観点で、集団に対して、いかに歯止めを形成していくか。不登校生が学校復帰したときに、いかに受け容れることができるかという集団の許容度をつくっていくのかということに人間関係学科自体の意味がある。小学校低学年では、行動スキルをどうつけていくかということが課題であるが、中学年から高学年、中学校と成長していくにつれて、考えるプロセスを大切にする、つまり思考スキルというものが大事になってくる。これからは、「ふりかえり」をどのようにして定着につなげていくか。ふりかえりからねらいへ。ねらいからふりかえりへという第3段階に入ってきたと言える。
講   演 
         東京理科大学教授       
                八並光俊氏
      
             経歴紹介
(要旨)
 学校教育の中では、少数の教員が多数の生徒に関わっていくと言う点で、特に困難校では限界を感じることがある。そこで、一次的援助サービス、育てるカウンセリング、プロアクティブ(先手型)の生徒指導を実践する必要が出てくる。アメリカでは、日本のように臨床心理士がスクールカウンセラーを務めているというのではなく、カウンセラーの仕事を定めた国家基準においては、子どもたちの学業的スキル、キャリア的スキル、個人的・社会的スキルを育てるものとして規定されている。テキサス州においては、幼稚園以前から高校生までのプログラムをあらわした社会で生きていくための社会的・ベーシックなスキルをガイダンス・カリキュラムとしてあらわしている。日本でも、図書文化社のHPの中にある、「ガイダンス・カリキュラムの広場」に紹介されているように、埼玉県上尾西中学校区の実践例からつくられた「社会性を育てるスキル 35時間」(小1〜中3)や千葉県の「いきいきちばっ子 思いやりプラン」、横浜の「横浜プログラム」のように先進的に取り組まれている所もある。
 松原七中校区のこれからの課題は、不登校の子どもたちが学校復帰をしたあとに、どうしていくか、というような、子どもたちのキャリア達成に向けた、「ねらい」というものをはっきりと示す必要があるのではないか。スキルから「ねらい」を考えるのではなく、「ねらい」からスキルを定めていくということが大切である。
シンポジウム
 コーディネーター
・・・  糸井川校長先生は、教頭として、研究開発の計画から関わって来られましたが、子どもたちはどういう変容を遂げているのでしょうか。

 
松原第七中学校校長           
                糸井川孝之
(要旨)
 松原七中は、今年で25年目をむかえる学校。地域とともに生きる学校として華々しく開校した。しかし、開校5年目くらいから、大変しんどい状況をむかえた。対教師暴力もあった。教頭として赴任してきた平成13年(2001)には、だいぶ落ち着いていたが、まだ、いろいろあった。落ち着き始めたのは、地域の人たちといっしょに国際文化フェスタを取り組んだり、生徒会主催の「涼もう会」や「Hotほっと会」に地域・保護者の方たちと取り組んできたことで、地域・保護者の方たちとの信頼関係が、再構築できたことが大きいと思う。そんな中、平成15年(2003)より、研究開発の一次指定を受けるが、当時は6%台の不登校率だった。当時の先生方の反応は「一番しんどい課題。不登校をなくすのに、どんな展望があるんや。担任の先生の責任になるんやぞ。」というものだった。不登校を出したら担任の責任というのが当時のふつうの見方だった。そこで、私たちが取り組んだのは、一つに、「ほっとスペース」を活用して、不登校の子どもたちに学校として関わるということ、担任任せには絶対にしない。もう一つは、全生徒たちにソーシャルスキルを中心にした授業を展開していくということだった。当時は、マザーアースエデュケーションの松木さん達の協力を得ながら、いっしょに授業をつくっていくということから、始めた。平成17年(2007)からは、地域の幼稚園、小学校とともに3校1園で第二次研究開発の取組がスタートし、幼〜中の11年間の学びというものを追求している。現在では、非常に落ち着いた学校になり、地域の方たちに褒められながら、課題をかかえた子どもたちも、穏やかな表情で生活できる居場所のある学校になっている。
  コーディネーター ・・・  西井先生は7年間、校区の子どもたちを見てこられたわけですが、人間関係学科のコアである「認知」「評価」「行動」という観点での子どもの変容はどうだったのでしょうか。

 武庫川女子大学大学院教授       
                西井克泰氏
(要旨)
 松原七中の初期の頃というのは、先生たちの心というものが表現されていたのではなかっただろうか。子どもたちも求めるものがあったのだと思う。人間関係学科を子どもたちに伝えていくために、教師劇に取り組んでこられた。その中で、「笑いあり、笑いあり」のさすがに関西だなあと思えるものをつくってこられた。そのようにして出来上がってきた教員と子どもの関係がベースにあって、そこから人間関係学科が出発し、地域にも小学校にも発信してきた。荒れた学校では人間関係学科ができないか、というと、そうではない。ただ「特効薬」という手段にしてしまうと、具合が悪い。松原七中校区では、「ふりかえり」も含めて、いろんなものを掲示物として貼りだしている。そこに書かれているもの以上のものが子どもたちに伝わっているのではないだろうか。かつて「荒れた」学校から松原七中にオファーがあったときにも、人間関係学科というよりも、子どもたちとの具体的な関係性のことから伝えてこられたように思う。そういうようなことが原動力になって、「認知」「評価」「行動」というものをねらいにしたものが可能になってきたのではないだろうか。先生方の人間関係学科だけでなく授業等での普段の関わりを通じて、育ててこられたのではないだろうか。
  コーディネーター ・・・・・・  八並先生は、かつて兵庫教育大におられたときに、不登校生等支援において、支援チームとして関西でご活躍されておりましたが、支援において必要と思われることをお話いただだければと思います。
 東京理科大学教授       
                八並光俊氏
(要旨)
 前任の兵庫教育大では、現場の先生といっしょにやってきた。不登校生支援のポイントで言うと、一番難しいのは先生方ではないか。先生たちの仲間づくり、結集力。学校は行政と似たところがある。教務は教務、教育相談は教育相談というものである。不登校の生徒たちは、学校復帰すると学習支援、あるいはこの先どうなるのかというキャリアに関する不安がある。そうだとすれば、進路の先生との連携は不可欠になる。教育委員会や関係諸機関との連携の中では、うまくいく可能性は高いが、エネルギーも時間も必要とする。そこで、大切になってくることが、子どもへの理解である。教師自身の子どもたちに対する見方・考え方、つまずきがどこにあって、どういうサポートが必要なのかということである。子どものことを知る努力をし、知ったことをどうするか。その中でも、子どもたちの強み、良さ、個性を見つけなければならない。プログラムというものの中では、子どもたちは一見、動いているようには見えるが、教師が与えたものである。子どもがつくり出す、子ども主導の授業につくりかえていかなければならない。今日、職員室にいさせていただいて、地域の人や教育委員会の人となごやかに過ごさせていただいた。これは、まず、ない。なんかおかしい。でも、わかった。いろんなイベントを地域あげて取り組んでいる。でも、先生方、無理しないで。やれる事をしっかりやらなければならない。できないことは、地域や、教育委員会や、関係諸機関にやってもらうこと、これがポイントになる。
フロアからの発言
 
松原第七中学校教諭
                井上享子
(要旨)
 はじめは、「うさんくさいな」という感じで受けとめていたが、徐々に変わってきた。自分のスタイルとしては「こわい先生」。松原七中で学んだことは、子どもを包みこむということ。不登校生支援で、「そこまでしなくていいんじゃないの」と思われるところまで支援していく。カセットコンロを持っていったり、冷蔵庫に食べ物を入れたり。地域の人や教育委員会の人たちとのつながりで、子どもが学校に来れる環境づくりに取り組んできた。小学校から鳴り物入りで入ってきた子どもがいるが、当初は、非常に危ない時期もあったが、家の立ち入った話までできるようになり、クラスの中でも、特に違和感を感じることもなく、クラスのみんなにホールドされている。教員の中にも、一人ひとりの子どもの目標ができ、授業面でもプラスになってあらわれている。
 恵我小学校教諭
                前田 勇
(要旨)
 研究開発に取り組んで、子どもたちがどういう動きをしているのかが、わかってきた。休みがちな子どもがいるのだが、明らかに変わったと言える。学校生活調査(アンケート調査)の中の「自分はダメな人間だ」という項目に、「そう思う」と答えていた子どもだったが、「そう思わない」という答えに変わった。それと同時に欠席数が飛躍的に減少した。自分の居場所や学力への不安が解消されたときに、好ましい姿に変わっていくのだなということを実感した。
 恵我南小学校教諭
                西畑哲子
(要旨)
 研究開発に取り組む前年、恵我南小と松原七中でコラボレーション授業に取り組んだ時、まず、松原七中の先生が取り組んだことは、小学校の子どもの実態を知るということだった。実態を把握したうえで、こんな授業にしましょうと提案されて、実態からスタートするということを痛感した。昨年の中間発表会に向けて、恵我小学校の先生と協働して授業づくりを行ってきた。合同学年会議はもちろん、恵我小学校の先生が恵我南小に出向いてもらって授業をしたり、同じ授業を恵我小学校でも取り組んでもらった。学年末には、両小学校が集まってカリキュラムを組み立てる会議に取り組んだりもした。今年度は、さらにいいものをめざしていきたい。
 恵我幼稚園教諭
                藤定マサミ
                
(要旨)
 昨年の中間発表会に、中学生が入ってくれた。最初はどう関わったらいいかがわからなかったみたいだが、幼稚園の子どもたちが「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」とまとわりついてくるなかで、中学生も心を開いていった。そのなかで、大好きなお兄ちゃんができて、写真に写っていたA君を見ると「あ、Aくんや」と喜んで言っていた。ブラスバンド部にも幼稚園に来て演奏してもらったが、子どもたちは「中学校で演奏してみたい」「こんなクラブしてみたい」という夢を持たせてもらった。子どもたちが、この地域で夢をもらいながら育っていってほしいと実感した。
基調報告
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