国語科研究授業
(インターネット上の情報活用)

日時:1997年11月13日(木)


学年・組:3年2組


授業者:李 貴美


単元:「おくのほそ道」


教材観:
 松尾芭蕉の「おくのほそ道」は、江戸を出発してきた関東・東北・北陸から大垣に至る2400km、
約150日間の紀行文である。冒頭分で旅という言葉が多用されるが、芭蕉の人生はまさに旅そのも
のであった。旅という言葉はいろいろなことの比喩として使われる。時間であったり、人生であったり
と。本教材の学習を通じて旅という言葉の持つイメージを自分なりにつかめたらと思う。
 この作品のそれぞれの場面をつなげていくことで、この旅が壮大なスケールのものであることや、芭
蕉の人間性や人生観を知ることができる。そのために、この作品の1場面を、旅の行程から切り離し
て鑑賞するのみでなく、できるだけ
多くの場面を学習できるように、コース別の班学習を行う。冒頭分
の口語訳を終えたあと、
7つのコースに分かれ班学習をする。3年生であるので古文にも馴れてきて
いるとは思うが、コースを選択することによって、より主体的に学習に参加でき、発表や作業の分担に
よって、それぞれの力にあわせた作品への取り組みか他が可能になる。また、評価に置いても、分
担によって到達目標が異なるため、ここに応じた絶対評価を基本とし、すべての生徒を評価できるよ
うにしたい。
 3年の2学期という受験や進路選択をひかえた慌ただしい時期に、芭蕉の足跡をたどり、旅を追体
験することによって、文学のすばらしさを、子どもに感じさせたい。

単元目標:
1.
「おくのほそ道」を紀行文としてとらえることによって、たびを通しての芭蕉の人間性・人生観を想
像し、楽しむ。
2.コース選択や発表の場を設定し、生徒が主体的に学習に参加することによって、古文に慣れ親し
む気持ちを養う。

3.音読・口語訳・班学習による相互の言語活動を通じて、言語能力の伸長をはかる。
指導計画:
第1時 「おくのほそ道」について基本事項の確認
     ノートに本文(冒頭分)写し
第2時 仮名使いに気をつけ、読みの確認
     班毎に読みの確認
     語句の意味に注意して口語訳
第3時 口語訳の続き。内容の確認
第4時 班毎にコース分け。各コース口語訳
第5時 班で、音読と絵・原文を描く生徒と、芭蕉インタビューを作成する生徒に分かれて作業。
     各コースの口語訳の確認
第6時 (本時) 「おくのほそ道」での旅の行程にしたがって発表
第7時 発表の続き
第8時 最終地「大垣」を口語訳
     「おくのほそ道」のまとめ
本時の目標
(第6時)
1.「おくのほそ道」の行程をたどり、旅を追体験し、旅の心を味わう。
2.発表の場に置いて、1人ひとりが授業に参加しているという意識をもち、話し方・聞き方の適切な
態度を身につける。
授業細案(本時):

生徒の学習活動 教師の支援活動、留意点
・冒頭分を音読する。
・地図で「おくのほそ道」の旅の道のりを
確認する。
・旅の行程にしたがって、班毎に発表する。
<発表の手順>
 ・絵を貼る。
 ・本文と口語訳を音読
 ・芭蕉インタビュー
 ・教師の一言
 ・小テストで内容を確認する。
<ポイント>
 ・音読は大きな声、適切なスピードで。
 ・インタビューに必ず入れる項目が入って
  いるかどうか。
 ・インタビューはみんなに聞こえる声で。
 ・聞く人はしっかり聞き、内容を理解しよう
  としているか。

 @コース「旅立ち」
 Aコース「殺生岩」「遊行柳」
 Bコース「佐藤兄弟」発表

・各コースの発表後、発表をしっかり聞けて
いたかを小テストで確認する。

・コースの発表に際して、各場面の1がわかるように
旅の道のりの地図を掲示する。
・発表の手順を説明し、各コースの発表の後に確認
テストを行うことを告げる。



→(口語訳とインタビューの関連づけ)


→口語訳を読むときは、原文と対比させながら読む
ように指示する。


・歴史的仮名遣いの読み、注意すべき古語の読み、
全体の内容にそった口語訳ができているかを確認
する。




・班毎の発
表が1つの旅としてつながっていることを
確認する。
☆ 今回の授業の特徴
1.「おくのほそ道」を紀行文としてとらえた。
「旅立ち」→「殺生岩・遊行柳」→「佐藤兄弟」→「平泉」→「立石寺」→「越後路」→「山中温泉」→
「大垣」のポイントを班ごとに学習し、発表する。
2.単に「口語訳」するのではなく、アナウンサーが芭蕉にインタビューするという形を取って、内容理
解を深めた。
3.絵の上手な子には絵で表現させ、内容を別の角度からとらえる楽しみを持たせた。
4.発表ごとにほとんどの子が答えられるような小テストを行い、担当した班だけではなく、全ての生
徒が内容を把握し、自信を持てるように努めた。

【 ま と め 】
 3年生の2学期後半といえば、どうしても「受験」を意識した授業になってしまう。そんな授業は、受
験に対して強い意識を持った生徒は食いついてくるが、まだそこまで自分を高めていない生徒、もし
くは受験に目標を設定していない生徒にとっては下手をすると「苦痛」になってしまう。
 そんな子が「授業が楽しい!」と感じてくれた。それが今回の授業である。全員が自分の自信を持
っている部分(絵を描く、読む、会話を作るなど)で「おくのほそ道」を読み味わい、自分のものにする
ことができたように思う。しかも、最近の受験に必要な「表現」することに意欲的に取り組めたことは
大きな意義があったと思う。
《芭蕉インタビュー 生徒作品》
・アナウンサーと芭蕉の会話(生徒が考え、作った作品)
Q「芭蕉さん、こんにちは」
A「はい、こんにちは」
Q「さっそくインタビューさせてもらいます」
A「ああ、いいですよ」
Q「なぜ、佐藤庄司の旧跡に来たのですか」
A「いやぁのぉ、あの義経に仕えていた佐藤兄弟の一族の旧跡となれば、行かずに
はおられなくてのぉ」
Q「はぁ、そうだったんですか。それなら、傍らにあった一族の石碑も見られましたか」
A「おお、もちらん見たとも」
Q「一族の石碑をごらんになってどうでしたか」
A「感激じゃったよ。特に二人の嫁の墓標に心を打たれたよ」
Q「寺の中に入って、何が印象に残りましたか」
A「義経の太刀や、弁慶の笈じゃよ。こんな風に笈も太刀も飾って端午の節句を祝ってもらいたいも
のだ。」
Q「芭蕉さん、こんにちは」
A「こんにちは」
Q「芭蕉さん、ここはどこですか」
A「山形領の立石寺という山寺じゃよ」
Q「ここへはなぜ、来てみようと思ったのですか」
A「人々がわしに絶対見に行くべきだと勧めるからじゃよ」 Q「それだけいい寺なんですね」
A「その通り。心も澄み渡るような静かな土地で、暑さも忘れてしまうんじゃ。
尾花沢か ら引き返して、ここに来て、本当によかったよ」
Q「それで、この『閑かさや岩にしみ入る蝉の声』という俳句ができたのですね」
A「いろいろ、他にも俳句の案を考えたのじゃが、これがわしの心にぴったりなんじゃ」
Q「どんな思いが込められているんですか」
A「うーん、こんなに静かな立石寺に蝉の鳴き声が響いている。何年も立石寺にある岩とわずかに
しか生きられない蝉が、自然の中で1つになっているように思えたんじゃよ」
Q「なるほど、さすが芭蕉さんですね。これからも気をつけて旅をして下さい」
Q「芭蕉さん、こんにちは」
A「はい、こんにちは。君はわしをずっと追いかけているのかね」
Q「はい、最後までついていきます。ところで、今日はひどく波が荒れていますね」
A「そうじゃな。今日は天の川の伝説の1日前、7月6日じゃからなあ」
Q「天の川の伝説って何ですか」
A「それはな、1年に1回、7月7日にだけ、織り姫と彦星が天の川で会うという話じゃよ。」
Q「そうだったんですか。だから波が荒れていたんですね。前回のインタビューのあと、酒田を出発
されて、鼠の関を越え、ここ越中の市振に到着したんですよね」
A「そうじゃ」
Q「ずいぶん長い道のりでしたが、お体の方は大丈夫なんですか」
A「実はのう、越後に入った頃から、雨と湿気で体の調子をくずしてしまい、道中記も書けていない
んじゃよ」
Q「それじゃあ、ご無理をしないようにして下さい。さようなら」