中学校区のネットワークづくりと本校の情報教育
〜発信・交流する授業をめざして〜

はじめに
 1996年7月の第15期中教審第1次答申により、情報教育の体系的な実施、情報通信ネットワークの
本格的な活用、情報発信型の学校づくり等が提言された。そのことにより、情報教育はすべての学校の
緊急の課題となった。
 本校でも、1996度末のマルチメディアパソコン42台の設置、「こねっと・プラン」
導入により、「新しい情報教育」への取り組みが始まった。
 ここでは、中学校区のネットワークづくりから始まった本校での情報教育の取り組みについて紹介した
い。
1.中学校区の情報教育のネットワークづくり
 1997年の6月に本校で、パソコンを活用した公開研究授業(学級活動「ナガサキ」社会「私たちのまち」
を校区の二つの小学校とともに行った。校区三校の全教員が集まっての合同授業研は、情報教育をめぐっ
て、グループごとの活発な意見交流が行われ、お互いに学び合う場となった。
 そして、8月に、校区の2つの小学校に22台のマルチメディアパソコンが設置され、小学校でも情報
教育が始まった。そのため、この夏休みには、校区の両小学校の全教員が本校のパソコン教室に集ま
り、熱心に研修を積み重ねる姿があり、いよいよ「中学校区の情報教育のネットワークづくり」をめざした
取り組みが始まった。
 この「中学校区の情報教育のネットワークづくり」の基盤となっているのは、これまでの三中校区の小
・中連携による同和教育の取り組みである。とりわけ、1994年度から2年間、「小・小及び、小・中連
携を基盤に、地域とともに歩む学力向上と積極的な人権意識の向上をめざして」をテーマに、「中学校
区の同和教育のネットワークづくり」を基にした、協同研究の取り組みが前提となっている。
2.マルチメディアパソコンの導入に向けて
 ・これまでの取り組み
 10数年前、松原市内の全中学校に1校あたり24台のパソコンが導入されたため、本校でもパソコン
の活用を一定進めてきた。
 早くからの導入により、職員室での教職員によるコンピュータの活用については、それなりの成果が
あった。しかし、各教科での活用という点では、多くの課題があった。技術・家庭科での「情報基礎」、
理科や数学科、選択履修の授業(「クリエイティブタイム」)と活用は限られたものであった。
 ・1996年度の取り組み
 1996年度の1学期、本校が市内の全小・中学校の情報教育のパイロット校として位置づけられた
ことにより、校内において、新しい情報教育をどう進めていくのか、検討していくこととなった。
 そこで、7月末にもった本校の推進委員会で、プロジェクト発足が提案され、本校としての情報教育
推進プランを作成していくことになった。八月には情報教育プロジェクトを各教科の代表を中心に発足
させた。管理職とともに、岐阜県や府内の情報教育先進校への学校訪問を行い、各教科での展開、
学校ぐるみの情報教育の推進について、そのイメージを明らかにしていった。
 また、本校だけでなく、松原市全体でもパソコンをどう活用していくのか大きな課題となった。そのた
め、松原市全体としても今後の情報教育の進め方について検討する場がもたれることとなった。
3.これからの情報教育
 「生徒は未来からの留学生」という発想のもと将来を見すえて、次のような方向性を確認していった。
@中学校区のネットワークと情報教育
 小学校で始まる情報教育に対応して、中学校でも、生徒たちの情報活用能力、コンピュータリテラ
シーを段階的に高めていかなければならない。そのために、各教科や人権学習等で活用していくた
めの教育内容や方法を交流・検討していくことになった。同時にコンピュータを無理に活用する授業
ではなくて、コンピュータだからこそできる授業を考えていこうということになった。中教審の、「学習
内容を豊かにする道具としてのコンピュータ」という発想から、学ぶべきものは多かった。
A地域のネットワークと情報教育
 次に、今まで本校が大切にしてきた、地域のネットワークづくり、とくに「人権と共生のネットワーク
づくり」にどう情報教育を結びつけていくかを検討した。
 折しも、今後の方向として地域や学校の実態に応じた「総合的な学習の時間」を活用した情報教
育が唱えられ、地域をテーマにした人権学習、総合学習や地域内のボランティア活動を表現する活
動にも、コンピュータを活用していくという方向が確認された。
B学びのネットワークと情報教育
 すべての学校に、インターネットが接続されるのもそんなに遠い話ではない。そうなれば、国際理
解教育や環境教育等で取り組んできたことを、国内や世界に発信していくことが可能である。
 世界の人と人とのネットワークがコンピュータを通じて可能になる。生徒たちの学びのネットワーク
が世界に広がっていく。こうした広がりを視野に入れた情報教育を推進したい。
4.マルチメディアパソコン42台の導入 
 うれしいことに、11月には「こねっと・プラン」1000校プロジェクトへの参加が決まった。インターネ
ットを活用した情報教育を進めていく願いが実現したのである。
 その時点で、校内では個人でパソコンを新たに購入する教員や、電子メールを始める教員も、現れ
てきた。
 マルチメディアパソコンの導入やインターネットの活用が具体的になるにつれて、情報教育に関心
をもつ教員が増え、校内の雰囲気が変わってきた。
 そして、待ちに待った42台のマルチメディアパソコンは、3学期にやっと設置された。
 先ず22台のパソコンは、現在のパソコン教室にLAN型で設置し、残り17台は普通教室を転用し
たマルチメディア室(仮称)に設置した。そこでは、音楽や理科の教科授業で活用できるように、一
定の周辺機器やソフトも松原市教委に整備してもらった。さらに、図書室や職員室に新しいパソコン
を設置した。
5.使えるソフトをどう選ぶのか
 今年の1月から、各教科ごとに授業で使うソフトを選び、学校全体で購入計画をまとめていく作業
に入った。
 授業で使えるかどうか、実際に手にして調べていくと、使えるソフトの数が教科により大きな偏り
があった。どう活用するのか、教科の中でも考えをまとめることが大変だった。しかし、予算の枠が
あるからこそ、他の教科の活用法に関心を持ち、教科を越えて議論が深まった。こうして、1ヶ月
近くかけて、学校としての購入計画をまとめることができた。
【資料】ソフト選定の基準
A 各教科の授業やクリエイティブタイム(選択履修)で活用できるもの。
B 問題ドリル的なものなど、パソコン以外で学習できるものは選ばない。
C 教材提示用について、いいものがあれば選ぶ対象にいれる。
D 生徒や教員が活用でき、発展性のあるものをできるだけ選ぶ。
E 地域学習や環境学習等、これからの学習に必要なものがあれば積極的に選ぶ。
F 導入されるウィンドウズ九五対応パソコンで動作確認できるものを選ぶ

 結果的に各教科が選んだソフトは百科事典、図鑑や辞書等のソフトが中心になった。ホームペ
ージ作成ソフトや教育統合ソフトなど発展性のあるものや生徒の自主活動にも活用する手話ソフ
トなども含まれている。
6.保護者にもパソコン体験の機会を
 2月には、学校全体や学年での研修計画を立て、ウィンドウズ95や統合ソフトの活用について
の研修を行った。研修の日程のやりくりがたいへんだったが、教職員の意欲と情熱でやりきるこ
とができた。
 設置まもない昨年度の3学期で一番印象的だったことは、保護者にパソコンを使った授業を体
験してもらったことである。本校では、1997年1月26日(日)に本校の参加・体験型授業を、
保護者に体験してもらうために、8つのコースを用意し、保護者の選択によるコミュニティ・レッス
ン(保護者体験授業)
を実施した。
 そのコースの1つに「インターネットの世界にご招待」があり、パソコン教室では、テレビ電話
(フェニックス)を活用して北海道の札幌市郊外の中学校と交流した。パソコンの画面を通じて
北海道の教室の外に、真っ白な雪の景色が見えた時には、参加した保護者から一斉に歓声
があがった。 コンピュータのネットワークを通じて、保護者が新しい出会いと体験をされたこと
は、本当にうれしいことであった。
7.情報教育部の発足
 1997年度は、前年度設置した「ホームページプロジェクト」と「情報教育プロジェクト」を統合
して、新たに情報教育部として発足させた。そして、パソコンを活用した各教科の「パソコン・リ
レー授業」が始まった。
 たとえば、1年生では、4月に技術科でパソコンの基本的な使い方の授業が、5月には音楽
科で楽器ソフトを活用した授業が、6月には社会科でホームページ作成の授業が、7月には
国語科でワープロソフトを活用した授業が、と各教科での活用が進んだ。
 そして、「ヒューマンタイム」(選択・体験型の人権学習)によるインターネットの活用も始まっ
た。
8.インターネットを使った3校合同授業研 
 6月9日には、校区内の2小学校と共に、情報教育をテーマにした3校合同授業研を開催
した。
 研究授業は、パソコン教室での1年社会科の「身近な地域」の学習と、マルチメディア室
での、3年のナガサキ修学旅行に向けた事前学習、の2つであった。
 社会科では、地域学習のまとめとして、松原市について調べたものをまとめていく内容だっ
た。そして、ホームページ作成ソフトを使い、「松原の紹介」のホームページを仕上げていく
場面を研究授業にした。生徒たちが選んだテーマは、松原の地図、歴史、産業、地場産業、
道路、学校、図書館、自然、福祉、医療、保育所などがあった。
 「ヒューマンタイム」での松原探検(地域総合学習)と連動したこともあり、調べ作業やホー
ムページ作成に意欲的に取り組むことができた。なによりも、入学後二ヶ月も経たない時期
に、生徒たちがホームページ作成ソフトを使ったり、画像の取り込み等ができたことは、研究
授業に参加した各校の教員にとって驚きだったようである。
 本校の教員にとっては、「リレー授業」により、生徒たちのコンピュータリテラシーがわずか
の期間に確実に向上したことがよくわかった。
 3年の研究授業は、長崎市や原爆資料館のホームページを学習し、その感想文を被爆
された方やホームページ作成者に電子メールで送るという内容だった。「原爆の図 丸木
美術館」のホームページも鑑賞し、その感想文も送った。
 ホームページを自在に扱っている生徒たちを見て、情報教育の新しい可能性を多くの教
員が確信した。
 その後、長崎のホームページ作成者および丸木美術館から、電子メールで返事が送ら
れてきた。それを読んだ生徒たちの驚きと感動は、今まで経験したことがないものだった。
9.クリエイティブ・タイムでの取り組み
 2・3年のクリエイティブ・タイム(選択履修)においても、パソコンを活用した授業を進め
ている。
 校区を流れる西除川の生き物を生徒たちとともに追い続け、地域の自然について、イン
ターネットで発信しようという授業や、音楽でコンピュータミュージックを作曲するという授
業等である。
 また、「私も童話作家」というコースでは、様々な童話の読み聞かせから始まり、4コマ
マンガで起承転結について学んだあと、3・4人のグループで童話を創作していくのであ
る。あらすじ、場面、登場人物が決まった段階で、生徒の役割分担を決めていく。下絵
をかいて、コンピュータお絵かきソフトを用いて仕上げていくメンバー、ワープロで打って
いくメンバー、と作業を分担し取り組んでいく。そして、いくつかの絵本を完成した。それ
らの作品を校区内の2小学校に、作成した生徒たちが寄贈し、小学生に喜んでもらえた
ことは、作った生徒たちにとってもたいへんうれしい体験となった。
10.おわりに 
 始まったばかりの本校の情報教育であるが、中学校区のネットワークづくりを基盤に
取り組んできた。それは地域のネットワークづくりから、「人権と共生のネットワークづく
り」をめざした情報教育でもある。
 さらに、インターネットを活用し、発信・交流をめざした授業づくりを進めていきたいと
考えている。